もしも、空が落ちてきたら

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 まるで、タイミングでも計っていたかのように、授業開始のチャイムが響いた。  長屋くんと水谷さんは、颯爽と姿勢を切り替える。性格は違うが、二人とも真面目な所だけは似ているのだ。  さあ、私も見習って授業に取り組まねばならないな。  そう思い、教科書に視線を落としかけた瞬間、水谷さんの横顔が目に映った。珍しく窓側を見ている。  改めて顔をあげると、微笑む口元が目に映った。珍しく、何か良いものでも見たような表情だ。  視線の先を追ってみる。窓の向こうは、疎らに雲の散らばる空があった。  何の変哲もない空だ。  水谷さんは、先程の会話を思い出しているのだろう。その横顔は実に満足気だった。  きっと、私には分からない色が、水谷さんには見えているのだろう。
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