もしも、空が落ちてきたら

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もしも、空が落ちてきたら

 前席の二人は、よく難しい話をする。 「ねぇ、もしも空が落ちてきたらどうする?」  そう切り出したのは、左の席の水谷さんだ。頭脳明晰で、クラスでも有名な人物である。  口火を切るのは、大抵彼女からだ。 「どういうこと?」  回答したのは、右の席の長屋くん。彼の方は、あまり頭が良い方ではない。 「例えば、地球は箱で、空は蓋みたいなものなの。宇宙なんて空間は嘘で、私たちの周りは全て壁で覆われているとするわ」 「うん」  しかし、それでも毎度水谷さんの話に耳を傾け、意見していた。私なら逃げてしまいそうな話に、何度も何度も。 「上にある壁が、何らかの理由で落ちてくるの。そしたら、長屋くんはどうする?」  水谷さんの表情は、普段から変わらない。彼女はいつだって真顔で、真剣な人だ。 「なるほど、空が落ちてきたらか。うーん……」  対して長屋くんは、水谷さんに見詰められながら百面相を披露している。眉間に寄せた皺が、色々な方に波打ち忙しそうだ。  だが、答えが出たのか、突然普通の顔に戻った。
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