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 その昔々、一家で一番美人だったみっちゃんにはそれはそれは沢山のお見合いの申し込みがきたらしい。しかし、みっちゃんはそれをことごとく断った。ある日、一家が住んでいた地域の有力な権力者の息子の求婚を断ったあげく、一家は村八分なった。 その後、厳しい生活を強いられた一家は、みっちゃんを今日まで除け者にしている、というストーリーをおばあちゃんからもお母さんからも昔から話されていた。  確かにみっちゃんは無口で、いつもおせっかいを焼いてくれるおばあちゃんとは正反対のタイプだ。 それは80年の生きてきた歴史がそうさせたのだろうか。  わたしの家族はみんな騒がしくて楽しい人たちばっかりだから、その輪に入れないみっちゃんは、なんだか可哀想だと思っている。  網戸の外に目線を移すと、五分前と変わらず滝のように雨が降っていた。昨日までは太陽がアスファルトをジリジリと焼いて、最高気温の記録を連日更新して、へたばる日本人に反比例するように蝉はジイジイうるさかった。今日、あの蝉たちはどこへ姿を消したのか。代わりにザアザアとこの家が滝つぼの中にあるかの如く雨の音がうるさい。  そうやってうるさい、うるさいと言って理由をつけてわたしは勉強をしない自分を守ってるだけだった。  
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