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「みっちゃん、なにしてるの?」  わたしの声は湿気る日本家屋に吸収される。    待てない子供、葵はみっちゃんの返事も待てずしょうがない、と重い腰をあげ(正確には重い上半身)をあげてもう一度シャープペンシルを握った。 握ったそれは思ったよりひんやりとしていて、時間が幾ばくか経った事と、時間をだらだらと無駄に浪費しているわたしに自責の念が襲って来る。  わたしは何の為に勉強しているのだろうか。この方程式を関数を解く事になんの意味があるのだろうか。周りの取り敢えず大学進学という波に乗って、溺れたわたしには、その意味は見出せなかった。 きっと、見出せない内はわたしは何度もシャープペンシルを握るたびにひんやりと感じるのだ。 「葵ちゃん。」
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