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   5分間動かなかった手が持っていたシャーペンを放り投げると、少しかびの臭いがする畳に寝っ転がった。よれよれの半袖Tシャツから、だらりと伸びた腕に、畳が刺さって痛い。  わたし5分間寝てたかも。  数学ってどうも眠くなる。分からないから眠くなるのか、眠くなって寝てしまうから分からないのか、わたしには分からない。  高校三年生の夏休みは受験の天王山。  誰が言った言葉かは知らないが、その言葉が勉強の全く進まないわたしを焦らせる。 「葵ちゃん、目が閉じてるよ。」  わたしは自動ドアが閉まるように自然に瞼を閉じると、それを見かねたみっちゃんが声をかけた。  おばあちゃんの妹であるみっちゃんの家はわたしの住んでる街から二駅離れた所にある日本家屋だ。 お母さんが勉強の進まないわたしに、スマホも漫画も家に置いてって、みっちゃん家に行って勉強しなさいと、言ったんだっけ。  お母さんがよく嫌味のように言う。  "みっちゃんは独り身だから。"  今年で80歳を迎えるみっちゃんは独身だ。  そしておばあちゃんやお母さん含めた一家が、敬遠してるのも事実だった。  
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