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その時、俺は金髪の男の肩から顔を出した少女の緑の瞳と目が合う。彼女の目は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
「おい、嫌がってるじゃないか!」
思わず口をついて出てしまう。
「なんだ、お前? 坊ちゃんが誰だか知っていて、そんな口を聞いているのか?」
丸刈りが少女から手を離し体をこちらに向け、低い声を出す。
「助けて、助けてください!」
拘束が解かれた少女は、できうる限り大声で叫んだ。
「待ってろ! 助ける!」
俺も大きく息を吸い込み叫ぶ。
大声が功を奏したのか、俺と少女の声を聞きつけたであろう複数の足音が響いてくるではないか。それらは確実にこちらに向かってきている。
「っち! そこの男、覚えていろ。俺をコケにしたらどうなるか、身をもって思い知らせてやる」
金髪は嫌らしい笑みを浮かべ、大股で俺の元まで歩いてくると舐め上げるようにこちらを睨みつけてくる。
悪意ある眼光に少し怯んでしまった俺だったが、男達は俺と少女へこれ以上何もせず、そのまま立ち去って行ったのだった。
「ありがとうございました!」
少女はペコリと頭を下げる。
「いや、俺は……」
声をかけただけで何もしていない。助かったのはたまたまに過ぎないからお礼を言われるのも戸惑ってしまう。
しかし……少女が男達に襲われそうになっていたのも頷ける。
長い緑の髪はウェーブがかかり、少し垂れている大きな目、愛らしいぷるんとした唇。胸は薄いけど、スラリとした健康的な手足に均整の取れた体躯……。身長は俺の肩の下くらいで女性としては平均的ってところか。
そして何より、どこか庇護欲を誘う雰囲気を持っているのだ。
「わ、わたしはエステルと言います。な、何かお礼をさせていただけませんか?」
「大したことをしていないから、気を使わなくていいよ。大通りまで送る」
「う、ですが……」
「俺は声をかけただけじゃないか。気にしなくていいって」
「でしたら、これだけでも。右手を出していただいていいですか?」
俺は少女――エステルに言われた通り、右手を前に差し出す。
彼女は俺の手を取り目を瞑った。
『ウィレム
性別:男
年齢:十八
レベル:十一
スキル:トレース
スキル熟練度:五』
な、なんだこれは? ステータス? 突然頭に浮かんできた。
「見えましたか? ステータス」
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