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「う、うん。すごいや。エステルは『ステータス鑑定』のスキルを持ってるんだ」
「はい。まだスキル熟練度が低いので、詳しいステータスは見えませんが……」
「ありがとう。一度ステータスを見てみたかったんだ」
エステルと一緒に大通りまで出たところで彼女と別れ、俺は近くのアクセサリー屋へ顔を出す。
アーシャの誕生日プレゼントを買うためだ。
彼女とはもう長い付き合いになる。コツコツ貯めたお金と今日ルドンから色をつけてもらった日当を使って、小さなルビーがはめ込まれたピアスを購入した。
彼女へ渡して……う。考えただけで緊張してきた!
アクセサリー屋を後にして、小さな酒場へ向かう。
隅っこの席へ座ると、すぐにウェイトレスが注文を取りにやって来る。
「お、ウィレムじゃない。今日は少し遅いんだね」
「アーシャ。本日のおすすめを頼む」
ウェイトレスはアーシャだった。赤い髪を左右で括りテールが肩口まで伸びた髪形をしていて、勝気な瞳、少し大きめの口、鼻筋が通ったキリリとした顔立ち。
彼女はいつの間にかしっかりと酒場の看板娘の座についているそうだ。
「うん、待っててね」
「あ、アーシャ……後で」
「はあい。食べ終わった頃に少し空けるね」
「ありがとう」
アーシャは人好きする魅力的な笑顔を浮かべ、厨房へ引っ込んで行った。
◆◆◆
スパイスの効いた鶏肉と野菜煮込みを食べていても、何を食べているのか分からないくらいドキドキしながら食事を終える。
店の外へ出てアーシャが来るのを待っていたら、心臓がバクバクと大きな音を立て、背中から冷や汗が流れてきた……。
「お待たせ」
いよいよ、アーシャが来たぞ。
「アーシャ、お誕生日おめでとう!」
小さな木箱に入ったピアスをアーシャへ手渡すと、彼女はぱああと顔が輝く。
「ありがとう! ウィレム」
「あ、あと、あのさ……」
「なあに?」
アーシャは急に真顔になって俺をじっと見つめてくる。
ま、待ってくれ。そんな顔をされると空気に耐えられない……。
だけど、言う。言うぞ。
「俺と付き合ってくれ!」
「うん。嬉しい!」
アーシャは俺の胸に飛び込んできて、ギューッと腕に力を込め抱きついてきた。
「じゃあ、仕事頑張って!」
「うん、ウィレム。三日後ね!」
「おう!」
その日はアーシャの休みの日だ。俺も休みってことを彼女も知っている。
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