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「おおっと、そこまでだよ、君たち」
男の声がしたので、私とエデは驚いて飛び上がった。暗い廊下の向こうからマントを翻してやってきたのは意外な人物だった。
「さっきはよくも邪魔してくれたね。せっかくの好機だったのに」
アルベール先輩が邪悪な笑みを浮かべると、自身の杖を取り出した。
「わざわざ魔術学園に入学して、学長の暗殺を機会を狙っていたのに……あの夜会を、千載一遇のチャンスを、君に台無しにされてしまったというわけさ」
私は驚いてアルベール先輩をまじまじと見つめた。女子学生に大人気、光魔法学科のアルベール先輩の正体は、どうやらスパイだったらしい。通りで、光魔法学科のくせに杖が黒々しいと思っていたんだ。
「まさか、君の様な小娘に見破られるとは思わなかったよ。どうして僕の正体がわかったんだい?」
アルベール先輩はゆっくりと杖を構えた。エデはにやりと笑うと、自身も杖を取り出して、私を守るように前に出た。彼女の杖は、暗闇の中でもうっすらと輝いている。
「ああそうか、君は口を利くことが出来ないんだったね。可哀想に、満足に魔法も使えないのだろう」
アルベール先輩が哀れむような口調で言った。
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