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「私は貴女が何処かで生きてるって信じてるわ···レアナ」
ツキが部屋から出る。
中央に立つ時計塔の上でラシルは止めどなく溢れる涙を流していた。
それは下に落ちる事なく、代わりに何かの術式を展開させている。
(ママ···ミク兄さんも元気そうにしていて良かった。本当は姿を見せたかったけど···それは出来ない。自分で決めた掟を破る訳にはいかない···)
ラシルは内心でそう呟くと両手を広げる。
術式は彼女の足元に移動すると大きな魔法陣へと変化した。
ラシルは言葉を紡ぐ。
「彼の者達の履歴を改変、回れ記憶の歯車、巡れ時の渦よ···記憶の削り!」
キンッ、パアアッ···、魔法が発動すると光のベールが時計塔を中心から拡がっていった。
それは波の様に幾重にも拡がっていく。
発動を終えたラシルは荒い息を吐いていた。
「ハァッ···ハァッ···ハァッ······っぐ! ごほっ!」
ラシルは嘔吐する。
「マスター!?」
直ぐ側でフェレアが現れ、ラシルの身体を支える。
ラシルは荒い息を吐きながら言う。
「ごめんね······フェレアにはいつも心配かけちゃって」
弱い笑みを浮かべるラシルにフェレアは言った。
「バカな事を言わないでください。天使の労り」
パアアッ···、優しい光がラシルを包むと彼女は眠っていた。
フェレアはラシルを優しく抱きしめると共に姿を消す。
その日から5日後に4第貴族の当主達が偽者とすり替えられていて、それを舞姫が本人達を救出し、偽者を倒す。
後方支援を帝が暫くする事になった。
何故、本来と違うのか···。
それはラシルが国中の民に記憶の書き換えと言う大きな魔法を使ったからである。
これは関わった者達が自由に暮らせる様にする為でもあった。
後方に帝が付くのは監視の意味も含まれといるという。
11ヶ月後にヴィケオアはボロボロに成りながらもカミナとの修行を終え、帰って来ると一月後に昇格試験を受け、見事合格し「漆黒の狩人」と言う二つ名を貰い、闇帝と成ったのだった。
闇の勢力は少しずつと上げている。
「······ラシル」
憂いを宿す瞳の先でが緑色に煌めく魔法陣の上で横たわって昏睡するラシル。
フェレアはラシルの代わりに地上の動きを視ていた。
そして数分前にある者が亡くなった事を知る。
(主人が目を覚ますまではこの事は伏せなくては······でもいったい誰が···?)
ある疑問に首を傾げるフェレア。
その一方でラシルは夢を見ていた。
一人の少年が悲しみで押し潰されそうになっていて、闇が少年を取り込もうと迫っていた。
「泣かないで···」
「ッ!?」
ラシルの掛け声に少年は顔を上げるが抱きしめられているのでそれ以上は動かす事も出来ないが、温かな温もりが少年を包んでいく。
「去れ!」
ラシルがそう叫ぶと同時に暗闇が光に包まれた。
「ッ!?」
少年が目を開くと草原に立っていて、側には自分を闇から助けてくれたラシルが側に居る。
彼は自分に申し訳無いって表情をしながら言う。
「直ぐに来れなくてごめんね」
「ううん···来てくれた。それだけで十分だよ」
そう言って抱きつけば、頭を撫でてくれた。
「貴方にお守りをあげるから失くさずに持っていてね」
彼の言葉に頷くと微笑んでくれる。
その笑顔が姉に似ていてとても安心するから。
ラシルは少年に光の魔法を掛けると彼は眠りに就いた。
「····守るから」
そう残してラシルはその場から消える。
ラシルが助けた少年は穏やかな寝顔で呟く。
「ありがとう……レーナ姉さん…」
そして5年後···。
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