ミックスダウン

「結局のところ、女なんてのは上書き保存する生き物なんだよ」

　ともすれば、不倫は文化だとか、どっかの芸能人みたいなことを言い出しかねないな……と思いつつ、僕―西脇真琴(にしわきまこと)―はその声の主である同い年の友人・菰口聖(こもぐちさとる)の顔を見つめた。菰口が、彼女に振られたので飲みに付き合え……というような、まったく「ので」の使い方がなってない誘い方をしてきたのは、つい数時間前。断る理由もなく、こうやって酒を呑み交わしているわけだが、やっぱり人間、誰しも年を重ねればこうなってしまうのだろうかと思うような、絡み酒だ。

「それは別に付き合う相手に限った話じゃねえ。てめえの言ったことを平然と破ってくるだろう。そういう意味でも、女は自分にとって都合がいいように記憶をアップデートしていくんだ」
「そんなの女性に限った話じゃないだろ」

　別にフェミニストであるわけではないが、あまりにも菰口の言っていることが極論に過ぎるので、僕は反論した。