清宮

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 半年前に別れた妻の声が脳裏に響く。ここは賃貸アパートだから、引っ越すのは容易かった。なのに自分は、仕事が忙しいと言って彼女の言葉を聞き流してしまった。  あのとき引っ越しに同意していたら、離婚はなかったのかもしれない。  そこまで考えて、清宮はため息を漏らした。  タラレバは嫌いだ。今さら過去の言動を嘆いたって、どうにもならない。  清宮はまた、流れているメタルコアのベースラインを口ずさんだ。  この曲をダウンロードして正解だった。  何を言っているのか分からないシャウト、しつこいギターリフ、意外にちゃんとあるメロディアスなサビ――最高だ。  キッチンに行き、収納棚にあるビニール袋からスティックパンを一本取って口に入れる。すぐに食べ終わり、洗面所に向かう。眼鏡をはずして、洗顔して歯を磨いて、鏡に映った自分の顔を眺めた。  我ながら、目はキラキラしているなあと思う。いわゆる、近視特有の目だ。瞼は薄いが奥二重。鼻はあまり高くないが、形は悪くない。唇は下唇に多少厚みがあるが、肉感的でもない。――まあ総合的に、普通の顔だ。不細工ではない。でも、モテまくるほどの顔面でもない。  バツイチになった清宮に言い寄ってくる女性が職場にいた。でも、その女と付き合う気にはならなかった。当分女はいらない。結婚にも懲りた。自分には向いていない。     
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