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エピローグ
玄関のドアの鍵をかけたとたん、慧の理性は壊れた。目の前にある細い体を、後ろから抱きしめる。
「ちょっと、いきなり?」
億劫そうな、清宮の声。でも、こちらを振り返る彼の頬は、若干赤い。
「キスしていいですか」
「――いいよ」
不本意そうな顔をしつつも、清宮が慧と向き合う体勢になってくれる。
慧は清宮の眼鏡をはずし、彼の唇に自分のそれを重ねた。思っていたよりずっとふんわりした感触に、感動が込み上げる。股間も勝手に反応し始め、慧は慌てて清宮から体を離した。
「もういいの?」
彼が物足りなさそうな顔をしている、気がする。自分の勘違いだろうか。
「もっとしていいですか」
「いいよ」
照れ隠しのように、清宮があさっての方向を見ながら言う。
――可愛い。可愛すぎる。
清宮にがばっと抱きつき、彼の後頭部に手を当てて引き寄せる。薄く開いた彼の口に、己の唇を近づけ、さっさと舌を入れた。清宮の舌を突くと、彼の肩がびくりと震える。でも抵抗してこない。嬉しい。
狭い三和土で、二人は長い時間、深いキスを繰り返した。唇の感覚がなくなってきたところで、漸く慧は満足できた。唇を離す。
「――ふ」
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