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清宮が三徳富士の入り口に着いたとたん、佐藤慧が大声で挨拶をかましてきた。
「清宮さん、おはようございます!」
体育会系のそれだ。鼓膜に声がビンビン響いてくる。清宮は片耳を手で押さえた。
「君ってスポーツか何かやってるの?」
「え? 高校のときにバスケはやってましたけど。大学では何も」
「ふーん」
とくに話を広げたくもなく、清宮はボディバッグからゴミ袋を取り出し、そのうちの二枚を慧に渡した。
「あ、どうもっす。俺も渡したいものがあるんです」
そういって、慧も背負っていたボディバッグを下ろして、中身を出した。
「これ、ゴーグルとマスク。あのゴミの臭い、目にもクるから」
慧が清宮の手に、それらを押し付けてこようとする。
「――え、ゴーグルはいいよ。僕は眼鏡かけてるし」
「――あ!」
今更気がついたように、慧が清宮の顔をまじまじと見てくる。
「眼鏡かけてないと一メートル先の文字も見えないから」
「あ、そんなに視力悪いんですか」
「まあね」
清宮は話をそこで打ち切った。あまり無駄口は好きじゃない。
「――どうすっかな。このゴーグル……」
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