清宮

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 慧がシュンとして言った。彼の大きな手のひらには、水泳用のゴーグルが載っている。フレームとストラップはピンク、レンズは透明だ。 「まあ、百均だし良いか」  気を取り直したように、慧が明るく言う。独り言にしては大きい声。なんだか受け取らないと可哀そうな気がしてきた。一応、好意で準備してくれたわけなのだし。 「あ――じゃあ、一応貰っておくよ。使うときが来るかもしれないし」  清宮は咳ばらいをして、慧から白いマスクとピンクのゴーグルを受け取った。ゴーグルだけボディバッグに入れる。 「ありがとう。マスクは使えるね」  現場は強烈な臭いがするから、この薄っぺらいマスクが有効なのか分からないが。  清宮は顔にマスクを装着し、手には軍手をはめた。慧はそれらに加え、目にもゴーグルをつけている。重装備な感じだ。 「さ、行こうか」  ふたりは山を登り始めた。     
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