311人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだね。ゴミ拾い自体はハードじゃないんだけど、山の上り下りがけっこう疲れるんだ」
実のところ、清宮は三徳富士を百パーセント嫌っているわけではない。ゴミ山や汚染された沼地は行政にどうにかしてほしいと思っているが、草木が生い茂った部分は、ふつうの山みたいで、登っていて癒されるのだ。
三徳富士の話をしているうちに、すぐにふたりは目的の場所にたどり着いた。駅前の商店街――今日は早く来すぎた。十分程度時間を持て余す。駅に一番近いゴミ収集場所で収集車を待つ。
隣に立っている慧をふと見上げると、彼がまだゴーグルをつけていることに気がついた。
「佐藤くん、ゴーグル外し忘れてるよ」
ぷっと笑いながら教えてあげると、慧が慌ててゴーグルを外した。彼のゴーグルは青だった。
「なんで僕のはピンクにしたの?」
素朴な疑問を口にした。清宮はピンクはあまり好きではない。服や鞄などは、グレーやベージュなど、地味な色を選んで買う。
暫し沈黙したあと、慧がぼそりと言った。
「似合うと思って」
「え? ピンクが? 変なの」
女の子でもないのに、と清宮は苦笑した。喜ぶ気にも、怒る気にもならなかった。
「あ――ゴーグルとマスク代、払うよ」
最初のコメントを投稿しよう!