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ファミレスにて
清宮の後を追うようにして、慧はファミレスの中に入った。ついてくるなとは言われなかったから、自分のお願いを了承してくれたのだと判断した。
店内はがら空きだった。今日は土曜日。朝八時という時間に、モーニングを食べにくる客は少ないだろう。
二人がレジの前で突っ立っていると、すぐにウェイトレスが駆け寄ってきた。
「いらっしゃいませ。お席は喫煙席にしますか? それとも――」
「禁煙席で」
ウェイトレスに皆まで言わせずに、清宮が答えた。
二人は窓際のボックス席に誘導された。
座ってすぐ、慧は窓の外を眺めた。もう桜は散っていた。地面を撫でるように、桜の花びらが風に吹かれている。
「ほらメニュー。四百円以内のにしてよ。千円しかないから」
そういって、清宮がメニューを差し出してくる。礼を言って、慧はメニューを開いた。実はそれほど腹は減っていない。家を出る前にがっつり朝食を食べてきたのだ。
「じゃあ俺、パンケーキセットで」
一番安いセットを選ぶ。もちろん四百円以内だ。
「じゃ、店員呼ぶよ」
清宮が銀色の呼び鈴を押した。すぐに暇そうに立っていたウェイトレスが駆けてやってくる。
「パンケーキセットを二つ、お願いします」
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