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「サトくんも無事でよかった」
慧の体に抱きついた。あわてたように慧が体を揺すっているが、力を総動員して彼の体に張り付いた。絶対離すもんか。
「キヨさん俺……あんたのこと、変な目で見てるよ。友達じゃなくて、性的な目で」
「もうどうでもいいよ、そんなの。俺もサトくんが世界で一番好きなんだから。問題ないだろ」
いちいち面倒なことを言われて腹が立ってきた。自分の気持ちははっきりしているのだ。慧のことが一番好きだ。彼が性的なことを望むならそれでも良い。受け入れる。
「俺もキヨさんのことが」
「わかってる。好きなんだろ? だから何だよ」
自分でも何を言っているのかわからなくなっていた。
「キヨさん、ちょっとここでは目立つんで」
慧の困ったような、嬉しそうな声で、清宮は急に我に返った。首を振って周りを見る。野次馬たちが火事ではなく、自分たちのことを興味深そうに眺めていた。
「帰ろうか」
三徳富士の火事も気になるが、自分にできることなんてない。消防の方に頑張ってもらおう。遠くから、応援の消防車がサイレンを鳴らしてやってくる。
清宮と慧は、手をつないで走った。清宮のアパートへと。
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