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酒場のマーメイドをウィキスンと読んだ。ウィキスンは饒舌に色々と語ってくれる。
「それでね、あたいはびっくらしちゃったんだよ、巨人が歩いてたの」
「巨人?」
俺がそう尋ねると、彼女は何か気に食わない虫を見るようにして、俺を見た。
「そうよ巨人よ、なんたって、こんなところに、ここは、水の王国なのよ」
「水だが、野腹もあるんじゃがの」
「ここは、海だよね」
「そうよ、海の上よ」
「海の上だが、なぜか、野腹とつながっているんだな」
「うるさいな爺」
ウィキスンは饒舌にセイハツ老人をいなしたのであった。セイハツ老人は下を見て、しょぼんとしていた。ウィキスンはさらに語る。
「だから、ここらへんにはレッドプレイヤーはいないよ、いるとしたら、奴隷商人くらいかしらね」
「なぜ、奴隷商人なんだ?」
「あら知らないの? 奴隷商人はプレイヤーもなれるのよ? 珍しい生き物を捕まえて、見世物に売るのよ、だから、巨人を捕まえるために、動き出したの」
「そりゃな、巨人は見世物になるかもしれないが、人間だぞ?」
「だけどね、食われるより、怖いことはないの、だから、速く見世物になってほしいの」
「でもなぁ、見世物になったからって、巨人が救われるのか?」
俺の疑問に、ウィキスンはさらに饒舌にかかってきた。しかもしつこいくらいに。
「レッドプレイヤーはいないけど、傭兵ならいるわよ、ここらへんの国を守るために闘うの、NPCだけどね、戦争が始まりそうだから、天王星と」
「それで、プレイヤーはやっぱり一人も参加しないんだろう?」
「いんや、一人だけ、カイザーって女の子が参加するみたいだよ」
「そんな子いたっけ? お師匠、何か知ってますか?」
セイハツ老人が立ち直って、こちらを見た。頭が剥げているが、床がびしょびしょのせいもあるが、海の酒場という感じで、不思議と親しみを覚えた。
「うむ、カイザーなら知っておるな、超上級者じゃよ、戦争のためなら、なんでもする。しかも不思議とカイザーは人を殺さない、致命傷を負わせて、立ち去り、戦争を有利に向けさせる」
「なるほどね、ヒーローだ」
俺が尋ねると、セイハツ老人はにやりとそう口を尖らせた。
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