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宙を舞った人間が、まるで人形の様に関節をあらぬ方向へ曲げながら吹き飛び、四散する。
誰かが怒鳴るが、その声はより大きな爆発音と炸裂音で掻き消える。
血と硝煙と土の焼ける臭い、それから鉄と鉛と火薬の混じった臭いが斑に漂う戦場を駆ける。塹壕から塹壕へ走り抜ける間に、何発もの銃弾が薄皮と僅かなばかりの肉を抉り取っていく。
塹壕に背を預け、空になった弾倉を交換しながら思う。
――どうして、こんな所まで来てしまったのだろう。
物心つく前に、親に棄てられた。施設に引き取られた後も、上手く馴染めずに虐められた。
そして、幾つかの施設をたらい回しにされた頃にようやく気付いた。僕は劣った、人間未満の出来損ないだったんだ。
それに気が付いて直ぐに、僕は施設からも見放された。何一つ自分のものなんか無かった僕は、持っている人から奪う事でしか生きる術がなかった。
略奪と破壊、何も持っていない出来損ないの僕に残されたたった二つの行為。その二つを駆使して、僕は綱渡りをする様に命を繋げた。
食べ物を得るために扉を窓を壁を壊し、素手では破壊出来ないものを壊すために鉄パイプをナイフを銃を奪った。
日々に余裕なんか無い。たった一欠片のパンを奪うのに、人を殺した事もある。僕は、そんな毎日に疲れていた。
ある日、楽に生活したくはないかと声を掛けられた。普段なら警戒して無視していただろうが、その時の僕はその誘いに乗った。
約束の日、指定の場所に現れたのは完全武装をした私設部隊だった。そいつ等は僕を拘束すると、そのまま拉致して何処かへと運んでいった。
目隠しを外されると、同じ様に拉致された連中がいる少し大きめの窓の無い部屋にいた。しばらくすると、前方のモニターに映し出された男が僕達に告げた。
――お前達は私のゲームの駒だ――
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