塩屋

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「もう何年いないの」 「就職した時に別れたから五年ですね」 彼女は笑いながら言う。 「気になる人とかいないの」 「あー。いる様な…いない様な…」 「何よ、はっきりしないわね…」 先輩の方が彼女を肘で突き、また声を上げて笑った。 そして小声で話し始めた。 その声は僕には聞こえなかった。 そのまま文庫本に視線を落とした。 「じゃあね…。お疲れ様、また明日ね」 そんな声で僕は顔を上げた。 先輩が降りた様だった。 彼女はその先輩に手を振ると、空いている僕の向かいの席に座った。 そして赤いバッグから文庫本を取り出して開いた。
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