塩屋

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彼女だった。 また駆け込み乗車を注意するアナウンスが流れる。 しかし、彼女は相当走って来たのか、息を切らして手摺を掴みながら僕の横に座って俯いていた。 彼女からも少し酒の匂いがした。 今日もどこかで飲んで来たのだろう。 なかなか息が整わないようだった。 二駅程行った辺りでようやく彼女は顔を上げた。 そして僕の顔を少し見て、会釈した。 僕も彼女に会釈して内容の入って来ない本を読み続ける振りをした。 すると彼女は僕の肩に頭を乗せて来た。 そっと彼女を見ると彼女は目を閉じて眠っているようだった。 僕は彼女をそのままにしておく事にした。 文庫本を閉じて鞄に入れる。 本どころじゃない…。 彼女に派手な鼓動が聞こえないか、それが心配だった。 僕は自分を落ち着かせる為に大きく呼吸した。
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