塩屋

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普通電車の始発の駅なので、毎日決まった席に座る事が出来る。 そこに座って膝の上に鞄を乗せると文庫本を開く。 最近はデジタル書籍が流行っているけど、やっぱり紙がいい。 読んだ厚みと残りの厚みを感じる事が出来るからだ。 電車が動き出す。 心地良い揺れと車窓から入ってくる朝日が好きだったりする。 朝日に輝く明石海峡が見え始めると、彼女が乗ってくる駅に入る。 最近では徐々に彼女がどんな服で乗り込んでくるのか予想出来る様になった。 今日は多分、上下黒のパンツスーツにお気に入りの赤いバッグ。 雨の日に濡れたそのバッグをハンカチで丁寧に拭いてた事もあった。 駅に入りドアが開く。 居た…。 いつも先頭に並んで、電車を待っている。 たまに先頭じゃない日もあるけど、それでも彼女は同じ場所に立ちつり革を握る。
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