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電車に乗り込んできた彼女はいつもの場所、つまり僕の前に立ってつり革を握った。
この駅は普通電車しか止まらず、乗り込んで来る乗客も多い。
この駅で電車はほぼいっぱいになる。
上下黒のパンツスーツに赤のバッグ。
予想は的中した。
そして彼女もバッグから文庫本を出して開いた。
彼女もブックカバーを付けていないので何を読んでいるかが見える。
ある女流作家の作品を読んでいる事が多い。
SNSの着信があったのか、スーツのポケットからスマホを取り出して、文庫本の上に重ね、返事を返している。
ネイルを施した長い爪で器用に文字を打つ。
僕はそれを文庫本を読みながらいつも見ている。
駅に着く度に乗客は増えるが、彼女はその位置を譲る事無く、つり革を握っている。
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