塩屋

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塩屋。本当に何もない駅だったりする。 でも彼女はこの駅に着くと、決まって空を眺める。 晴れていようが雨だろうが、俺の向こうに広がる空をじっと見つめる。 塩屋に何かあるのだろうか…。 少し前のめりになる彼女のバッグが僕に当たる事があり、 「あ、すみません」 と彼女に何度か謝られた事があった。 最近は大人も子供もイヤホンをして音楽を聴いている事が多いが、彼女は音楽を聴いていない。 僕も同じで、耳から音が入ると本の内容が入って来ない事あって…。 これも慣れなのかもしれないけど。 塩屋を出ると車窓いっぱいに海が広がる。 凪いだ海は朝日を浴びてその水面を輝かせている。 海の形相は四季でまったく違う事を引っ越して初めて知った。 この風景を見れないだけで損をした気分になる。 都会に住む人は海にも四季がある事さえ分からないのだから。
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