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その日は残業で帰りが少し遅くなった。
「おい、宮本。ちょっと行くか」
課長が酒を飲むジェスチャーをしながら言う。
それを丁重に断り、会社を出た。
もう日が暮れると少し寒い季節になってきた。
そろそろ薄手のコートでも出すか…。
いつもの様に改札を抜けてホームへと上がる。
帰りは来た電車にその日の気分で乗る事にしている。
ホームに普通電車が入って来たのでそれに乗り、端の席が空いていたので、そこに座った。
ドアが閉まる瞬間に三人の女性がかけ込んで来た。
「危険ですので、駆け込み乗車はおやめください」
と社内にアナウンスが流れる。
「怒られたね」
一人の女性がそう言って笑っていた。
僕は文庫本を出して顔を上げた。
するとそこにはいつも朝の電車で見る彼女の姿があった。
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