青い僕らの旅行記

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青い僕らの旅行記

序章 双子  僕達は「青い双子」。周囲からそう呼ばれているのは、僕たちの名前が同じだから。僕こと兄の(あおい)と妹の(あおい)。なぜ同じ名前なのかは分からない。  僕達は産まれたときから一緒だった。趣味も好みも思考も。だから親元を離れて旅をしたいという目的も、一緒に成し遂げることにした。  旅をする理由は些細なことだった。"まだ知らない世界を見たい"。 第三章 兆候  一緒に旅立って一年が経った。本当に色んな所へ行った。知らない物もたくさん見つけた。でもまだ足りない。なぜなのか。  碧は新しい物を見つけるたびに喜んで興味を持った。僕はそんな碧を見て知らない感情を抱くようになった。  初めて海というものを見たとき、僕は衝撃を受けた。なんて"あおい"のだろう。まるで僕達「青い双子」のためにあるような気がした。  碧の瞳に海の色が反射して瑠璃色に輝く。この時僕はこの気持ちを知ったのだ。  "殺したいほど好き"という気持ちを――。 第五章 (なぎ)  僕が碧に告白してから一年が経った。碧は快諾してくれた。双子だから互いの気持ちが手に取るように分かるのだ。  旅を続けていくうちに分かったことがある。世界には色々な人たちがいる。男同士、女同士、子供同士。数え切れないほどの愛の形があることを知った。  だから僕は気づかなかったのだ。"許される関係"と、"許されざる関係"があることに。 第七章 湿気(しけ)  いつからだろう。碧の気持ちが分からなくなったのは。旅を続けていくうちに、彼女は変わってしまったようだった。  新しい物を知るたびに、古い考えを脱ぎ捨てていく。それは気持ちも同じだったのだ。  それは小さな綻びだったのに、今や修復不可能な大きな欠陥になってしまった。  僕達は「青い双子」。共に産まれ共に育ち、共に旅に出た。しかしいつからか平行線になっていった。潮時かもしれない。嵐は近い――。
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