旅路の途中

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旅路の途中

「ただいまー。……なんか焦げ臭い?」 「気のせいじゃない?……たぶん、近所の子供たちが花火で遊んでたからよ。」 「そう?ならいいけど……。」  両親が帰ってくる前に"儀式"を終わらせた。跡形もなく消えた本の物語など、もはや知る術は私のみ。  右ポケットの中に入っている古びた(しおり)をそっと握りしめる。  蒼衣の栞――。栞を燃やすことはできなかった。だって私達「青い双子」の物語はまだ途中なのだから。  本の物語など無かったことにして、また新しく書けばいい。  本の中の記憶を書き換えて、私だけのものにしてやる。双子はどこまでも繋がっているのだから。 「どうしたの?青子……。具合悪い?」  双子の兄が亡くなって相当ショックを受けていると思っている母親が、心配そうに顔をのぞき込んでくる。いいよ、そんな茶番は。 「なんでもない、今夜は何?」 「あなたの好きな肉じゃが、ハンバーグ、特性味噌汁よ!」 「……嬉しい。」  だってさ、蒼衣。仏壇の方に顔を向けると、遺影が笑っている気がした。温かい気持ちがした。  それと同時に激しい虚しさが心を貫いた。
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