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「し、失礼します」
と、礼門はいないが断りを入れて部屋に入り、その本を手にする。和綴じの古い本だ。江戸時代のものだろうか。
「やべっ。価値のあるものだったらどうしよう」
侑平は無造作に掴むんじゃなかったと後悔。しかし、古いからという理由だけではないよたよた具合。明らかに礼門が読んでいる。
「えっと、画図百鬼夜行」
タイトルを読んで、はてと侑平は首を捻る。百鬼夜行ってあれだよな。妖怪が大挙して練り歩くやつと、その意味を思い出す。
「何なんだ。この本」
中をぱらぱらと見ると、妖怪の絵がわんさか出てきた。ああなるほど、これで妖怪の流行をチェックしていたのかと、すんなり理解できるのは、侑平の柔軟な頭だ。
それにしてもこの本、書き込みがしてあったり端を折って印が付けてあったり、かなり読み込まれている。
「江戸時代にも妖怪ブームってあったのかな」
「あったよ」
「ぎゃあっ!?」
誰もいないと思って呟いた独り言に返事があり、侑平は飛び上がる。見ると礼門だった。
「れ、礼門さん。どこに?」
「住職に呼ばれてね。卒塔婆の代筆を頼まれたんだ」
「は、はあ」
そういうこともやるんだと、侑平は呆れるやら感心するやら。というか住職。自分で書かないんだ。さすが元サラリーマン。
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