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妖怪は自分の絵を見てもらうと喜ぶところがある。たぶん、認識されるからだろう。で、ついでに見えている侑平に存在をお知らせしてくれるわけだ。迷惑この上ない。
「鳥山石燕と言ってね。こいつのおかげで妖怪はどんどん増える。人々は面白おかしく妖怪を認識するで、まあ大変だった。しかもそいつ、俺の能力を見抜いて、作画に協力しろとか言い出してな。ふざけんなよって話だ。こっちは妖怪を減らしたいの。どうして増やすのに協力するんだ!」
喋っているうちに思い出したのか、礼門の怒りのボルテージが上がる。普段、取り乱したところを見ないだけに、怖い。
「あ、悪い」
「い、因縁の相手だとは理解しました」
だから本がぼろぼろだったのかと納得。怒りで折り曲げ、しかし噂の正体や妖怪の正体を特定するのに使い--なるほど、心中穏やかではいられない。
そういう、思い出のある本も、ここには埋もれているなだなと、侑平は改めて積まれた本たちに目を向けたのだった。
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