Data.3

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近代的な中環(ヅォンワン) や庶民的な生活感の漂う街もあるが、香港といえば九龍・尖沙咀(ガウロン・チムシャツォイ)のイメージが浮かび上がってくるくらいに尖沙咀の魅力と毒と刺激は強烈だ。 治安が良い中に、どこか胡散臭い雰囲気があるとでもいうか、ここ数年に登場しだしたショッピングビルもその空気に花を添えていた。 アウレリアは目的地である九龍・尖沙咀にある彌敦道(ネイザン・ロード)に到着すると、パーキングエリアにバイクを停め、待ち合わせ場所であるビー・アッパーというレストラン&バーへ歩き出す。 店内に入り、店員を無視して奥へ向かうアウレリア。 「遅いぞ、レリア」 奥の席には、前髪で片目が隠れている黒髪のミディアムヘアの女性がいた。 紫色の裾が長いタイトなノースリーブワンピースには、動きやすいようにか、深いスリットが入っている。 その側のハンガーには、女性のものであろう中華風の刺繍(ししゅう)がしてある、丈の短い白のジャケットがかけてあった。 スリットから(のぞ)く引き締まった太ももに、中国系にはめずらしく彫刻像のような繊細な目鼻立ちを見れば、誰でも彼女の(とりこ)になるだろうと思わせる大人な女性。 年齢は20代半ばくらい。 女性は、二重瞼(ふたえまぶた)のつぶらな目でアウレリアを(にら)む。 アウレリアは適当に(うなづ)き、面倒くさそうに女性の正面の席に座った。     
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