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上の人間さえいなければ、今の日本の暴力団には力がないからやりたい放題だ、と言う羅・希漢。
ぼさぼさの短髪に金のネックレス、そしてラフで趣味の悪い柄シャツ姿だが、ガッチリとした体格に、顔には滝で流れる水のような髭をたくわえ、見るからにチャイニーズマフィアな風貌。
うまく上を出し抜けたと思っているその言葉には、自信がみなぎっていた。
「わかりました、羅・希漢の兄……」
かたや、覇気のない武・雲。
乱れた長髪に、長袖のヘンリーネックシャツを着て、痩せこけた体をしている。
その姿は、組織に隠れてやっている麻薬流通ルートの疲労が、かなりたまっていそうだった。
グラスに高級紹興酒を注がれ、左右には若い妖艶な美女がいても、武・雲は冴えない表情をしている。
羅・希漢は、「なにが不安なんだ?」と声をかける。
そう言われた武・雲は、恐る恐る話し出した。
香港にいると落ち着かない。
この国にはあいつがいる。
もしあいつに……マリゴールドに知られたら殺される。
「バカバカしい。あいつが知ったって、ここにはこれだけ兵隊がいるんだぞ。もしここに来たとしても殺されるのはマリゴールドの方だ」
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