1.天才と秀才

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 私は優秀だった。  驕りではない。周りの賛辞や嫉妬がそれを証明している。誇っていいほどの努力もしてきた。  所謂勝ち組の家に生まれたが故に、両親にも親戚にも過度な期待をかけられ、そして応えてきた。  毎日何時間も勉強に励み、何種類もの習いごとをきっちりこなした。もちろん自分磨きも怠らない。あらゆる分野で血の滲むような努力を重ね、周りには決して見せない。  才色兼備と褒め称えられれば謙遜して見せ、数多の視線にも気づかないふり。  美しく、聡明で、慈愛に満ちて誇り高い、完璧な存在。  ただ一点を除き、みんなが求める小倉花音で在り続けた。  内海ななせに会うまでは。
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