6人が本棚に入れています
本棚に追加
生徒会室に戻ると、頭を抱えていた役員達の顔がぱぁっと輝いた。
「ななせ先輩!どこ行ってたんですかぁ」
「この書類を読んでください!どうしたらいいか……」
「それよりもこっちが先!」
わらわらと集まってくる役員に、ななせは怠そうに溜息をつく。
ガタリと音を立てて会長の椅子に座り、長い脚を組む。ななせが座るとただの椅子でも玉座のようだ。
そして、書類に物凄い速さで目を走らせてゆく。時折役員に指示を出したり、紙に何かを書きつけたりしているが、スピードは落ちない。
ななせ不在の時に悲鳴を上げていた役員達は、すっかり安心しきった顔で雑談している。
私がやりかけの仕事に戻ろうとすると、書類の束がひょいっとかっさらわれた。
「ついでだから君の分もやっておくよ。三十分で終わらせるから、熱い珈琲を頼む」
「……そう。ありがとう。今日はケーキを焼いてきたのよ。ななせの仕事が終わったら、みんなで休憩にしましょう。飲み物を淹れるから、珈琲と紅茶、好きな方を選んでね」
穏やかに微笑むと、わっと歓声が上がった。
そうね、そうよね。
私がこの場で役に立つことなんて、給仕役くらいなのだ。ななせがいる限り。
最初のコメントを投稿しよう!