1.天才と秀才

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 生徒会室に戻ると、頭を抱えていた役員達の顔がぱぁっと輝いた。 「ななせ先輩!どこ行ってたんですかぁ」 「この書類を読んでください!どうしたらいいか……」 「それよりもこっちが先!」  わらわらと集まってくる役員に、ななせは怠そうに溜息をつく。  ガタリと音を立てて会長の椅子に座り、長い脚を組む。ななせが座るとただの椅子でも玉座のようだ。  そして、書類に物凄い速さで目を走らせてゆく。時折役員に指示を出したり、紙に何かを書きつけたりしているが、スピードは落ちない。  ななせ不在の時に悲鳴を上げていた役員達は、すっかり安心しきった顔で雑談している。  私がやりかけの仕事に戻ろうとすると、書類の束がひょいっとかっさらわれた。 「ついでだから君の分もやっておくよ。三十分で終わらせるから、熱い珈琲を頼む」 「……そう。ありがとう。今日はケーキを焼いてきたのよ。ななせの仕事が終わったら、みんなで休憩にしましょう。飲み物を淹れるから、珈琲と紅茶、好きな方を選んでね」  穏やかに微笑むと、わっと歓声が上がった。  そうね、そうよね。  私がこの場で役に立つことなんて、給仕役くらいなのだ。ななせがいる限り。
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