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2.敗北
内海ななせを知ったのは、高校に入学してすぐの定期考査明けのことだった。
得点ランキングの貼り紙に、有り得ない事態が記されていた。
学校でも塾でも、常に一番上にあった私の名前の上で輝く、見知らぬ名前。
私が落とした点数はたった三点。
けれど、一位は満点だった。
ざわりと胸が騒いだ。
たまたまだ。二位なんて最初だけ。それに、相手はきっとガリ勉の冴えないやつだ。
何度自分に言い聞かせても、性別もわからない、学年一位のことが気になって仕方ない。
私はその日のうちに、こっそり内海ななせを見に行った。
そして、後悔した。
紅茶色の髪に、長い手足、何よりも美しい瞳。数十人の石ころの中でも目を惹く、冷たくきらめく宝石のような少女。一人窓際の席につき、退屈そうに頬杖をついている。
彼女の瞳には、教室の人間も、窓の外の景色も映っていないようだった。もちろん私も。ただ、倦怠と憂鬱が立ち込めている。
それが、内海ななせだった。
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