シェン・リャンロン その3

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「そういうことになるわね」 「別にそれは構わねぇけど、現場でイスラム連中の指示を聞くってのやりづらいな」 あたしの意見に、イーが笑いながら言う。 「そこなんだけど。コマンダージェイがいうには、私たちの部隊は、最前線で戦ってくれれば自由に動いてもらっていいとのことよ」 「そう……」 あたしが返事をする前に、サンがなにやら深刻な顔をしてボソッと言ったので、あたしはサンの後ろに回りこんで、いきなり抱きついた。 「なに怖い顔してんだよ」 耳元で(つぶや)くあたし。 「あそこは中東に負けないくらい凄惨(せいさん)なところなのに……。世界はそれを無視し続けている……」 あたしが抱きついているにも関わらず、サンは難しい顔をしていた。 その顔を見たら、あたしはいつものように、胸や尻に触れることができなかった。 あたしは、(うつむ)いていたサンの顔を両手で掴んで、自分の方へ向けた。 「そんな顔してんじゃねぇよ。今度もあたしたちはみんな生き残る。ただそれだけだろ?」 あたしがそういうと、サンがいつものふくれっ面になり、イーもスーも笑い出した。 「もう、バカなんだから。でも……それはたしかなこと……」 そして、サンもボソッと言って笑った。     
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