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シェン・イーロン その5
旗のある建物へ到着し、周辺を調べた後、内部とターゲットがいるかどうかを、グレードミル入り双眼鏡 サイトロン TAC-MS832を使って確認する。
この双眼鏡は父さんが愛用していたのもあって、私たちは気に入って使っていた。
「いました」
サンが小声で言った。
言われた方を見てみると、ターゲットであるサイードという男が、部屋で1人食事をしていたのが見えた。
実物は写真や映像で見るより太っていた。
若い頃の写真だったのか?
まぁ、どうでもいい。
実物より良く見せようとするのは、権力者じゃなくてもよくある話だ。
他を見る限り、部屋の外にも人はいないようだ。
リャンが小さい声で呟く。
「幸いなる者 ねぇ。残念だけど、幸福は続かない」
人の名前で皮肉をいう、リャンがよく使う冗談だ。
「では、いつも通り私とイーは外で待機。不測の事態に備えて退路を確保しつつ、車も出せるようにしておきます」
「おうっ!!!」
「……ぅん」
サンの作戦――というより、私たちのお決まりの作戦スタイルだ。
近接戦闘に優れるリャンと、気配を断ち、音も立てずに行動できるスーが暗殺担当で、私とサンが後方支援や逃げ道を守る。
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