シェン・イーロン その3

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ほら、わかる。 私も荷物を枕にして横になった。 行軍中の貴重な睡眠時間なのに、つい私はいつものように父さんのことを考えてしまう。 あの人はどんな女性がタイプなのだろうか? 父さんはおそらく東アジア系の顔をしているから、フランス生まれの白人である私はタイプではないかも……。 ひょっとしたら恋人がいるのかも? もしかしたら奥さんと子供もいたりして!? いや、いるはずがない!! なんて悩んでいるうちに眠ってしまう。 それはよくあることだった。 「イー、時間です。交代を」 私を起こしにサンがやってきた。 「了解。ちょっと待ってね」 私がそう答えると、サンが私の顔を凝視(ぎょうし)して言った。 「また父さんのことを考えてましたね。せめて仮眠する時と戦闘中は控えた方が」 スーとのやりとりが特別なのではない。 私たちはお互いに言葉がなくても、相手のことが理解できた。 理屈や理論では説明できないが、私が思うに父さんの教え方の影響だろうと思う。 「心配ありがとう。サンも今くらいは現場のことは忘れて眠ってね」 私はそういうと、微笑みながらその場を後にした。     
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