シェン・イーロン その3

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見張りに戻ると、私たちが隠れていた草むらの少し離れたところに、一台のテクニカル・ピックアップトラックが停車した。 それを見て、頭が切り替わり、体が即座に戦闘モードに移行する。 息を殺し、音を断って、完全に森林に溶け込む。 止まったトラックはライトも消さず、ドアが開く。 降りてきたのは3人のアサルトライフルを持った連中だった。 だが、私たちにはまったく気がついていないようだ。 中東では主婦が庭で家庭菜園をするように、一般家庭で自動小銃が作られていると、以前に父さんが言っていた。 特にパキスタンでは銃密造の熟練した職人が数多く存在し、彼らは自家製の工作機で模造銃を製作し、ゲリラや海外のブローカー(今ならビットコインでの闇ウェブでの取引も) に売って生計を立てているようだ。 それでいて品質も上々。 フィリピンにも同じようにあるそうだが、お国柄か酷いものが多いらしい。 彼らが持っているアサルトライフルは、遠目で見る限りAK-47型。 古い型をしているその自動小銃は、おそらくソビエト連邦の模造品だと思われる。 彼らはトラックから降り、特に警戒もせず、持ってきていた食料を出し、地面に座って食べ始めた。 ずっと車に揺られて、お尻でも痛くなったのか? そう思っている私の横で、リャンが声を出さずに口を動かすのが見えた。     
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