42人が本棚に入れています
本棚に追加
/111ページ
「検問が見えてきましたね。イー、IDの準備を」
サンにそう言われ、私はポケットからIDカードを出した。
「しっかし、女が3人なんてバレないかね。あたしが連中なら怪しくて身体検査するよ」
「リャンはカラダ目的だろう。このスケベ」
リャンがニヤつきながらいうと、サンが怪訝な顔をして冷たく言った。
リャンはそういっているが、彼女も私たちも知っていた。
たとえ怪しくても、IDと検問を通るだけの理由があれば、簡単に中に入れることを経験からわかっているのだ。
近づいた町を見て、もうほとんどが焼け野原のようだった。
こんなところを拠点している理由は、この周辺で勝利したゲリラがたまたま近くの町を占拠しただけで、作戦もクソもないだろう。
町の入り口にやってくると、早速、検問の兵士がトラックを停車するように言ってきた。
私はIDを提示しながら、慣れた口調で現地語を使い、前もって考えていた話をする。
「頼まれていた食料を運んできました」
「ご苦労さん」
その兵士は荷台へ目をやった。
「ちょっと訊きたいんだが。あの後ろにいる子供はなんだ?」
そういわれたが、サンがすぐにフォローに入ってくれた。
「捕虜として途中で拾いました。この町の出身だそうです」
最初のコメントを投稿しよう!