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スーは髪が白く、とても中東系には見えない。
だが、検問の兵士はまったく疑わずに私たちを中へ入れてくれた。
こんないい加減なのに、と私は思った。
しかしゲリラの資金力では、武装と食料を集めるのが精一杯で、セキュリティの事まではお金が回らない。
なによりこんなに堂々と入ってくる敵も、私たち以外にいないだろう。
「運転を代わりますよ」
サンが気を使ってくれて、私は荷台へ行き、リャンが助手席に座った。
荷台から感じる夜の風は心地いい。
しばらく町の中を車で走っていると、夫婦の死体が見えた。
その夫婦は抱き合って死んでいた。
殺されても抱き合っているなんて、きっとすごく愛し合っていたんだろうなぁ。
私はまた妄想する。
……あの夫婦。
どっちがより愛していたのだろう?
旦那さんかな? 奥さんかな?
私と父さんなら、当然私だ。
でも本当は、私があの人を愛するくらい愛して欲しい……。
それはちょっと欲張りすぎかな……。
気がつくとスーが私の顔を凝視していた。
「どうしたの、スー?」
「……とぅさぁ」
どうやら私の妄想は、スーに気づかれてしまっていたようだ。
私たちは適当なところでピックアップトラックを止めた。
帰りも使いたいので、鍵は抜いて持っておくことにする。
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