シェン・イーロン その4

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「悩みがあるんのでしょう? よかったらお姉ちゃんに話してみて。絶対に力になるから」 「やめて!!! 優しくしないで!!! 姉様に私の気持ちがわかってたまるもんですか!!!」 今となれば、両親も姉も皆、私を愛していたと思える。 だけど、当時の私にはどうしてもそう思えなかった。 (ふさ)ぎこんでいる私を見かねた両親が、トルコ旅行に行こうと言い出した。 私を元気づけるための旅行になるはずだった――。 だが、現地で私たちはテロリストに襲われる。 空港からホテルへ向かうタクシーでのことだった。 車から降ろされ、まず運転手が殺された。 父は言葉が話せたようで、なにやら伝えていると、いきなり銃で撃たれた。 それを見た母が、我を忘れてテロリストへ向かって行き、父と同じように撃たれる。 私は怖くなって走り出した。 その時、銃声が聞こえたが、私は無事だった。 姉が私を庇って撃たれたのだ。 それから私はテロリストのアジト連れて行かれた。 それから、あの人……父さんに――。 私は愛されていた。 ただ、それは私が望む形ではなかっただけで……。 「うぅ……」 「うん? どうしたの、スー?」 「どうしたのじゃねぇよ。ぼ~しやがって。またエロいことでも考えていたんだろう。まったくイーはしょうがないな」     
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