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ともかくあたしは、父さんがいるなら残る気にもなるが、いつまでもこんな会社で命をかける気はない。
あんなよくわからん奴のために、死ぬなんてまっぴらごめんだ。
「次の仕事は決まったんですか?」
サンが訊いた。
「えぇ、これからカシミールへ行くわ」
「ここから近いですね。で、標的は?」
続けて訊くサンにイーは説明する。
話によると、パキスタンから支援を受けているイスラム過激派組織の依頼だそうだ。
……こないだイスラム系のゲリラを殺したのに、今度は味方になるのか。
いや、同じ宗教といっても別物なんだろうな、きっと……。
「カシミールってどこだよ?」
あたしが訊くと、サンが信じられないといった表情をして、返してくる。
「1940年後半から現在も続く紛争が行なわれている場所だぞ!?」
「そうよ。父さんが授業で教えてくれたでしょ。忘れたのリャン?」
イーもサンに続いて、同じような顔をしていた。
正直、実技以外の授業はどうでもよかったあたしには、そんな記憶は残っていなかった。
あたしは適当に誤魔化して、ミッションの内容を話すようにいうと、今回は暗殺ではなく、拠点奪回作戦への応援。
なんでもイスラム側の司令官が、インドの治安部隊に殺害され、かなり分が悪いんだそうだ。
「じゃあ、あたしたちの相手はインド政府か?」
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