シェン・リャンロン その3

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今でこそ仲良くやっているが、あたしとサンはよくケンカをした(今でもたまにあるけど……) 。 酷いときは殴りあうまで()めることもめずらしくなかった。 きっかけはいつもつまらないことだった。 サンの言い方が細かすぎるとか、あたしの態度にサンが文句をいったりとか、その程度のことだ。 殴り合いでは、あたしの方が力も技術もあったので、一方的になることが多かった。 サンの首に腕を回して地面に倒し、顔面を殴りつける。 あたしは手加減せず殴った。 いつまで殴り続けた。 それでもサンは表情を(くず)さず、ただ顔に青あざを作り、鼻と口から血を流すだけだった。 泣かせる気でやったあたしは、それを見てさらに苛立(いらだ)った。 弱いくせに、強がってんじゃねぇ、と。 ケンカの止め役はいつもイーだった。 もしイーがいなかったら、あたしはサンを殺してしまったことがあったかもしれない。 それからあるときに戦場で、あたしが1人孤立してしまったことがあった。 部隊とはぐれ、敵に捕まりそうになったが、1人で敵陣に飛び込んでくる奴がいた。 それはサンだった。 普段、あれだけあたしにやられているのに、彼女はあたしを助けに来た。     
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