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中学三年のクラス替え。
わたしは幼馴染の駿とクラスが初めて分かれた。
そして友達の夏夜は同じクラスに。
「やった~、蘭と同じクラス!」
「わたしもだよ、夏夜。最後までよろしく!」
夏夜にVサインを送る。
二年から同じクラスになった夏夜。
小さくて可愛いんだよ。
新しい季節。新しいクラス。
「幸福が飛んでくる」
わたしの花言葉。ちゃんと、幸福が飛んでくるかな?なんて思ってしまう。
そしてわたしの隣の席の城守裕貴。
最初はただ、クールだな…なんて思ってたけど…。
「……ふぅ」
その日の昼休み。
わたしは屋上に行き、空を眺めていた。
雲ひとつない空。
その下で桜が舞っていた。
(綺麗だな……)
桜の花言葉は『精神の美』。
神秘的でいいでしょ。
桜は春の中でも特別な花。
だからこそ憧れる。
そしてわたし、蘭。
胡蝶蘭から取って、蘭と付けられた。
花言葉は『幸福が飛んでくる』。
わたしには幸福が飛んでくるかな?
本当に、いい出会いがあるのかな?
フッとため息がでた。
そんなのない…そう思ったから。
ガチャ…
「……?」
誰かが入ってきた。
それは隣の席だった城守裕貴だった。
「…お前、何してんの?」
「……あ、別に。見てただけだよ。」
「ふーん」
「ここ使う?……じゃ、行くね。」
そう言い、わたしが城守裕貴の隣を横切る。
その時、腕を掴まれた。
「……え?」
わたしを見て腕を強く掴む。
「…な、何?」
「なんで泣いてんの」
「……え」
わたしは泣いてない。
どうゆうこと……?
「なんでとか思ってんのかよ。バレバレ」
「な、泣いてないよ」
「涙目。泣こうとしてただろ?」
「え?嘘…」
そっと自分の目を触ると、微かに涙の粒が……
(ホントだ……)
「………」
「まぁどうでもいいけどよ。出るんだろ?早く行けば。」
(は?……はぁ??)
「自分が止めたんじゃん!」
「別に。」
「意味わかんない!」
ある意味失礼でしょ!
わたしは怒りながら屋上を出て行った。
でもあることに気が付いた。
「………」
あれ……。
不思議だ。さっきまで暗い気持ちだったのに……。
「あー、そうか。」
わたしは軽く笑う。
「あいつも優しいんだ。」
そう、独り言がもれたのだった。
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