act.01

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  ── 可哀想に・・・、どうせ査問を受けているのだろう。警視庁の堅物達も、酷な事をする・・・。   そうする立場に立つのが嫌で出世をわざと避けてきたその老刑事は、青年に少し同情するような視線を向け、その場を立ち去ったのだった。  「櫻井正道。27歳。3年間の交番勤務を経て、潮ヶ丘署刑事課強行犯係に配属。検挙歴は、巡査時代からあわせて三桁を越える。なかでも、凶悪犯検挙に関して、巡査時代から優れた成績を収めていることは異例中の異例である。剣道二段、柔道三段。護身術、逮捕術、自動車運転技術等に秀で、特に狙撃技術に関しては警察学校の歴史の中でも、最も優れた成績を残す。加え、櫻井が出た現場は、必ずといっていいほど被害者は無傷で救出されている。性格は清廉潔白で真面目。職務遂行に並々ならぬ情熱を注ぐ。ただし、過去に難あり・・・」 「まるで、SAT(機動隊所属特殊奇襲部隊)にでもいそうな人材だな。本庁の捜査一課に推薦されてもおかしくない成績じゃないか」  刑事部長の言葉に、化粧っけのない会議室内になんとも言えぬ重い溜息が漏れた。 「この櫻井とやらは、それほど被害者救出に長けているのかね」     
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