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櫻井は、強行犯係の先輩刑事・吉岡徹郎よりは随分控えめな性格をしていたが、はたから見ればスタンドプレーと取れるような派手な捕り物劇を行うことが多々あった。
それは、櫻井が時に常軌を逸するほど自分の身体を顧みず被害者救出にあたることがあるからで、そのお陰で本庁の刑事達からは少々煙たがられている節がある。本庁の刑事は、手柄を所轄の若い刑事に持っていかれることを特に嫌うのだ。
櫻井は、ファミリーレストランの向かいにある駐車場のブロック塀に身体を預けながら、街路樹越しに再びファミレスの窓を見やった。
少女は泣いている。気力の萎えた無表情な顔で、ただ涙だけを流している。
彼女が親元から奪い去られて、六日。疲れきっている頃だろう。
通常、幼児の誘拐は、一週間も過ぎ、犯人が少女に対して好意的だと逆に犯人に懐く傾向がある。
今回の場合も、少女に対しては犯人もきちんとした扱いをしているようだ。
現にこうして、ファミレスで少女のためにお子様ランチらしきものを注文し、デザートのパフェまで頼んでいる。
しかし、櫻井が見る限りでは、少女の顔つきは異常だった。
表情のない無機質な顔を子どもが見せる時は、非常に危険である。櫻井はそのことに気づいていた。
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