act.01

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 ── 本庁のヤツらが何だというのだ。彼女を救い出すことの方が何より大切ではないのか。例え始末書を食らおうが、処分されようが、知ったことか。  犯人を逮捕して少女を救出し、それで“処分”されるなんてべらぼうな話だが、実際日本の警察機構はそのような仕組みになっている。一連の警察不祥事から、“組織改革”などと言われているが、所詮根底は変ることはない。 「お、やっと到着だ」  それらしき車が二台、ファミレスの駐車場に入っていく。 「おいおい、いきなり入ってっちゃうのかよ」  吉岡がぼやいた。その声には少々不安さが滲み出ている。  本庁の連中は、いかにも休日ファミレスにやってきた客というふうな格好で車から出てきたが、櫻井にしてみればいかにも不自然に見えた。何せ今日は平日なのだ。あんなに大勢の目つきの鋭い男達がぞろぞろ中に入ってきたら、格好がどうだろうと、犯人が警戒するに決まってる。 「バカか、あいつら」  そのことに吉岡も気づいたのだろう。  櫻井が動いた。 「おい」  自分を呼び止める吉岡を振り返り、櫻井は不機嫌そうな顔で言った。 「店長から教えてもらった裏口がもう一箇所あります。やつら、裏口に回した人数が少ない。俺らはそこから回って店内に入りましょう」 「どうするつもりだ」     
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