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act.05
その日の仕事が終わり、櫻井は井手が在籍している坂出メンタルクリニックを訪れた。
井手は現在、東京拘置所にいる中谷の精神鑑定を引き続き行っているはずだった。
坂出メンタルクリニックは、会社帰りのサラリーマンでも通院できるようにと遅くまで開いている。
受付で「潮ヶ丘署の櫻井です」と名乗り、井手の所在を訊いた。
「井手は、ただいま外出中です」
こんな時間まで、仕事をしているらしい。中谷の件だろうか。
「連絡を取りたいのですが・・・」
こざっぱりとした顔つきの受付嬢は、冷静な瞳で櫻井を見上げてきた。
果たして井手に連絡を取っていいかどうか値踏みしているのだろう。
じっと黙って佇んでいる櫻井を見て、受付嬢は無表情さをそのままに、電話の受話器を取った。
井手の携帯電話にでもかけているのだろうか。しばらくして、井手が電話に出たらしい。
「お忙しいところ、すみません。ええ、そうです。はい。櫻井様という方が来られています。先生とお会いしたいと。・・・そうです。警察の方です。・・・はい、はい。判りました」
受話器を置いて、受付嬢はメモ用紙にあるところの住所を書き込んだ。
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