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「ただいま」
「あっ、よかった。帰って来てくれて。あのね、侑真、なんだか二階から物音がするのよ。けどね、見にいったら誰もいなくてなんだか怖くて」
カタ、カタカタ。トン、トトトン。
「ほら、聞こえるでしょ」
「もしかして幽霊さんかも」
エマの一言で母が青ざめた顔をした。
「エマ、何を言っているんだよ。ゴマかもしれないじゃないか」
違うとわかっているけど母を安心させたくて僕はそう話した。
「えっ、ゴマさん。そうなのかな。いなかったと思うけど」
「タンスの裏とかテレビの裏とかに隠れていたのかもよ」
「そうだといいんだけど」
僕は二階に向かいながら「ゴマ、いるのか」と声をかけた。
「幽霊さんじゃないのかな。うーん、ゴマしゃんかなぁ。かくれんぼしているのかな、ゴマしゃん。エマもかくれんぼする」
エマは僕についてきてニコニコしていた。
きっとゴマはいないと思う。エマの言う通りたぶん幽霊だ。僕とエマの部屋の扉を開けて目を見開いた。
幽霊たちの行列が天井付近にできあがっていた。ええっ、こんなにたくさん。
「ほほう、こりゃ大変だ。早いところあの世へ導いてやらなきゃ。レッツダンス」
「わーい、わーい。おしり、ふりふり。おしり、ふりふり。くるくるりんですってんころりん」
エマは何をしているのだろう。あれはダンスとは言えない。それでも幽霊たちがエマに気づき天井から降りてくる。幽霊の出迎えはダンスって決まりでもあるのか。
「どけ、俺が先だ」
「なによ、割り込まないでちょうだい」
「馬鹿を言え、おまえこそ割り込むな」
「どきな、おまえたちは後回しよ。私は偉いんだからね」
「うるさい、偉いとか関係ない。あの世では意味がないことだ」
「どけどけどけ。ここか、天国へ直行できる入り口があるのは」
たくさんの幽霊が蹴散らかされて一人の男が顔を出す。
エマと狐神様は顔を見合わせていた。
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