第二話「幽霊たちへのおもてなし」

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「ただいま」 「あっ、よかった。帰って来てくれて。あのね、侑真、なんだか二階から物音がするのよ。けどね、見にいったら誰もいなくてなんだか怖くて」  カタ、カタカタ。トン、トトトン。 「ほら、聞こえるでしょ」 「もしかして幽霊さんかも」  エマの一言で母が青ざめた顔をした。 「エマ、何を言っているんだよ。ゴマかもしれないじゃないか」  違うとわかっているけど母を安心させたくて僕はそう話した。 「えっ、ゴマさん。そうなのかな。いなかったと思うけど」 「タンスの裏とかテレビの裏とかに隠れていたのかもよ」 「そうだといいんだけど」  僕は二階に向かいながら「ゴマ、いるのか」と声をかけた。 「幽霊さんじゃないのかな。うーん、ゴマしゃんかなぁ。かくれんぼしているのかな、ゴマしゃん。エマもかくれんぼする」  エマは僕についてきてニコニコしていた。  きっとゴマはいないと思う。エマの言う通りたぶん幽霊だ。僕とエマの部屋の扉を開けて目を見開いた。  幽霊たちの行列が天井付近にできあがっていた。ええっ、こんなにたくさん。 「ほほう、こりゃ大変だ。早いところあの世へ導いてやらなきゃ。レッツダンス」 「わーい、わーい。おしり、ふりふり。おしり、ふりふり。くるくるりんですってんころりん」  エマは何をしているのだろう。あれはダンスとは言えない。それでも幽霊たちがエマに気づき天井から降りてくる。幽霊の出迎えはダンスって決まりでもあるのか。 「どけ、俺が先だ」 「なによ、割り込まないでちょうだい」 「馬鹿を言え、おまえこそ割り込むな」 「どきな、おまえたちは後回しよ。私は偉いんだからね」 「うるさい、偉いとか関係ない。あの世では意味がないことだ」 「どけどけどけ。ここか、天国へ直行できる入り口があるのは」  たくさんの幽霊が蹴散らかされて一人の男が顔を出す。  エマと狐神様は顔を見合わせていた。
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