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「あーあ、幽霊さん来ないね。つまんない」
「エマ、幽霊さんが来ないってことはいいことなんじゃないのか」
「えっ、なんで」
「陽太くんのこと忘れたのか」
「陽太くんのこと」
エマは天井あたりをみつめて「元気かな」と呟いた。
あんなに必死に助けたいって泣きながら願っていたのに、エマって嫌なことはすぐに忘れてしまうのだろうか。幽霊が来ないってことは死ぬ人がいないってことだろう。それもわからないのか。しかたがないか。
あれ、けどまったく死ぬ人がいないなんてことあるのか。
「やっぱりおまえは阿呆だ」
「なんだよ、もふもふ様。阿呆って言うな」
「ここに来る幽霊は一部の者だけだ。死者が全部ここに来たら、ここは爆発しちまうかもな。幽霊もある意味エネルギー体だからな」
「ふーん、なるほどね」
「それと、幽霊が来ないのはいいこととは言えないぞ。まあ、生きている者にとって死は悲しいことだろうけどな」
「どういうことだ。そういえば、前にもそんなこと話していたような」
「あの世は故郷みたいなところだって話しただろう。この世は修行の場みたいなところだってことだ」
「ふーん、もふもふ様っていろいろ知っているんだな」
「今更気づいたのか。おいらは博識なのだ」
もふもふ様は軽くステップを踏んでニコリとした。
「ちょっと頼りないけどな」
「な、なんだと。そんなおまえは阿呆者だ」
「そうかもな」
確かにそうだ。やっぱり僕は阿呆なのかも。まあいいか。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんは阿呆なの」
「エマ、なんでそこに注目するんだよ」
「だって、だって、なんか面白いんだもん」
溜め息を漏らして項垂れた。
「ふふふ、元気出せ」
なにが元気だせだ。そうだ、そういえばチナはどうしているだろうか。またお見舞いに行くって約束したのに行っていない。ああ、もうきっと寂しい思いしているはずだ。
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