第三話「仲間は多いほうがいい」

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「あーあ、幽霊さん来ないね。つまんない」 「エマ、幽霊さんが来ないってことはいいことなんじゃないのか」 「えっ、なんで」 「陽太くんのこと忘れたのか」 「陽太くんのこと」  エマは天井あたりをみつめて「元気かな」と呟いた。  あんなに必死に助けたいって泣きながら願っていたのに、エマって嫌なことはすぐに忘れてしまうのだろうか。幽霊が来ないってことは死ぬ人がいないってことだろう。それもわからないのか。しかたがないか。  あれ、けどまったく死ぬ人がいないなんてことあるのか。 「やっぱりおまえは阿呆だ」 「なんだよ、もふもふ様。阿呆って言うな」 「ここに来る幽霊は一部の者だけだ。死者が全部ここに来たら、ここは爆発しちまうかもな。幽霊もある意味エネルギー体だからな」 「ふーん、なるほどね」 「それと、幽霊が来ないのはいいこととは言えないぞ。まあ、生きている者にとって死は悲しいことだろうけどな」 「どういうことだ。そういえば、前にもそんなこと話していたような」 「あの世は故郷みたいなところだって話しただろう。この世は修行の場みたいなところだってことだ」 「ふーん、もふもふ様っていろいろ知っているんだな」 「今更気づいたのか。おいらは博識なのだ」  もふもふ様は軽くステップを踏んでニコリとした。 「ちょっと頼りないけどな」 「な、なんだと。そんなおまえは阿呆者だ」 「そうかもな」  確かにそうだ。やっぱり僕は阿呆なのかも。まあいいか。 「ねぇねぇ、お兄ちゃんは阿呆なの」 「エマ、なんでそこに注目するんだよ」 「だって、だって、なんか面白いんだもん」  溜め息を漏らして項垂れた。 「ふふふ、元気出せ」  なにが元気だせだ。そうだ、そういえばチナはどうしているだろうか。またお見舞いに行くって約束したのに行っていない。ああ、もうきっと寂しい思いしているはずだ。
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