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おまけ
月ヶ瀬「ねえ、ちょっといい?」
朝日「いま本棚整頓中」
月ヶ瀬「ちょっとくらい、いいじゃん。ケチ」
朝日「ちょっとくらいって、月ヶ瀬さっきからずっと外見てぼーっとしてるじゃないか。僕たちふたりの当番なのに、結局僕だけやってるし」
月ヶ瀬「こんなにいい天気なんだから、気楽にやろうよ」
朝日「入荷された蔵書、どれだけあるかわかってるのかよ」
月ヶ瀬「……」
朝日「ん?」
月ヶ瀬「……」
朝日「どうしたの」
月ヶ瀬「そんなに怒らなくてもいいのに……」
朝日「か、顔上げてよ。怒ってなんかないから」
月ヶ瀬「うそ、怒ってるでしょ」
朝日「怒ってないよ」
月ヶ瀬「そっ! じゃあ、ちょっといい?」
朝日「なんだ、演技かよ。騙したな」
月ヶ瀬「キミ、素直だよね」
朝日「まったく……。で、なんだよ」
月ヶ瀬「『太陽と月の図書室』って、ちょっと納得いかないんだよね」
朝日「なにが?」
月ヶ瀬「タイトルだよ」
朝日「いいタイトルじゃないか」
月ヶ瀬「だって、わたしが月でキミが太陽なんでしょ」
朝日「ふたりの名前からとってるんだろ」
月ヶ瀬「でもさ、月って、太陽に照らされて光るじゃない。それってつまり、わたしはキミがいて初めて輝くってこと? なんか、キミのほうが上位者って感じしない? 男尊女卑?」
朝日「い、いや、そんなの絶対考え過ぎだって」
月ヶ瀬「なんでそんなはっきり断言できるわけ」
朝日「だってさ……、もともとタイトル違ったらしいよ」
月ヶ瀬「え、そうなの!? 誰が言ってたの」
朝日「騎月さん」
月ヶ瀬「えー、わたしそんなの聞いてないし」
朝日「君には黙っておいてくださいって、僕からお願いしたんだよ」
月ヶ瀬「なによそれ。どんな権限があってそんなことしたの」
朝日「権限だなんて大袈裟な。なんか恥ずかしかったから」
月ヶ瀬「朝日英司くん、いまここで教えてください」
朝日「なんでフルネームなんだよ」
月ヶ瀬「さあ」
朝日「いまは作業中だろ」
月ヶ瀬「朝日英司くん、ごまかさないでください」
朝日「なんで丁寧語」
月ヶ瀬「なにモジモジ照れてるの。男らしくないな」
朝日「もう、わかったよ。『太陽と月の図書室』のもともとのタイトルは……」
月ヶ瀬「タイトルは――?」
朝日「第4章の章タイトルだって」
月ヶ瀬「なんだっけ」
朝日「自分で調べなよ」
月ヶ瀬「ええ、もう! わかってるなら言ってよ」
朝日「『笑ってよ、月ヶ瀬』」
月ヶ瀬「えっ……」
朝日「だから、『笑ってよ、月ヶ瀬』ってタイトルだって」
月ヶ瀬「……」
朝日「月ヶ瀬、顔赤い」
月ヶ瀬「あ、赤くないよ。はいはい、作業再開!」
朝日「って、それでも君は席を立とうとしないんだな」
月ヶ瀬「わたしは現場監督なの!」
朝日「……『笑ってよ、月ヶ瀬』より『働いてよ、月ヶ瀬』だな」
月ヶ瀬「なんか言った!?」
朝日「そんなしかめっつら、似合わないから。
笑ってよ、月ヶ瀬」
特別掌編『放課後のふたり』
おわり
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