プロローグ

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校内に鳴り響くチャイムを合図に、教室のみんなが一斉に席を立ち、思い思いに動き始めた。 「いまからどっか寄ってく?」 「あ、わたし、いいお店見つけたんだ!」 「えー、行きたい、行きたい!」 ケラケラと笑う女子たちを視界の端で見た。ホント、幸せそうだ。高校生活はこうありたいとうらやましくなるくらい明るい。 入学式から三日経ち、初めこそぎこちなかったクラスの雰囲気はすっかり緩んだ。 初日のオリエンテーションでひとり一人自己紹介する時間があった。あれを境にみんな急速に打ち解けた気がする。 自分の趣味を熱く語る女子、おどけて笑いを取りに来るムードメーカー、いきなり彼女を募集しだす男子など、みんな自分のキャラを恥ずかしげもなく露わにしてアピールしようとしていた。 この言葉は大嫌いだったけれど、「スクールカースト」とかいう序列がこの瞬間決まったのかもしれない。 それなのに僕はといえば……。 自分の名前を口にしてから、 『えっと、趣味は読書です。よろしくお願いします』 なんの面白みもないコメントを、表情も変えずにボソボソと言っておしまい。 まばらな拍手には、『コイツ、微妙』というムードが漂っていた。     
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